十五世脇屋川柳句集

  

居眠りのマリヤカラスは紅葉す
憤懣を池へ投げ込めば ポチヤン
パイプ 何を考える 落ちる
終列車が窓を叩くからおやすみ
野火 だれも見てないから消える
コップ割れた日 嘘が生れた
蛇 愛されて瞼ができる
迷い子の泪も涸れて虹が立ち
叱られる毛穴は笛を吹いている
一粒のめしは余白を画き続け
灰の中からリング一つが語り出す
旗振れば無罪となりし小銭入
故里を握り続けている画鋲
ネジ ぽつんと海を語り継ぐ
眼の奥へおろおろ座る影法師
ズック靴少女の神は未だこない
嘘ばかり取り巻いている花畑
涙一つぶ幸の仮説を信じない
澄んだ目と出合う奇策が溶けてゆく
舟虫が死んだ渚に朝がない
傷心の少し間があり 百日紅
進化論西瓜の種を遊ばせる
鬼が待ってる終列車の トイレ
凉風の寝顔へ仏借りてくる
毒をたらすと立ち上る 影
手花火の尽きて悲しい貌をあげ
余白あり銀の写楽へ逢いにゆく
小心と言う一本の傘がある
鉛筆が落ちて童話が動き出す
十字路のどちら向いても棘の道
恥一つ拾って爪が伸びてゆく
殺し文句をそっと研いでいる聖者
五百円握って立往生する 鏡
連結器或る日の夢へはずれだす
黙々と箸だけ動く負の茶碗
台所で無気味に育つ低気圧
窓際の椅子が持ってる迷子札
百の鍵 百の罪だけ錆びてゆく
虹のカケラを集めて昏れる紙の笛
春の水 つかめば深い眼と出合う
したたかな森 旅人を白くする
偽善者の敷布はいつも乾かない
節分の鬼が炒ってる鬼の豆
ベンチが溶ける老人消えてゆく
どうしても凡夫になれぬ鬼瓦
崩落の谷とは知らずあきあかね
蛙チェロ弾く鼻ぱらぱらと落ちる
猿山のおかしな噺 花の留守
咳一つ時計の表情を変える
スニーカーから芽が出る春の祭典
ハゲ山の一夜に踊るニューハーフ