川柳には定まった形式があります。俳句も同じですが、川柳は、五・七・五、合わせて「17」という限定された音節から成り立っており、このような詩を「定型詩」と呼びます。日本古来の短歌(31音)ももちろん定型詩で、7音と5音で構成された定型のリズム(七五調といいます)の原形をなすものです。
「寸鉄、人を殺す」などといわれますが、仮名にしてただの十七字、一息で言い切れる定型の詩は、世界にも類例がなく、この短さこそが、川柳のいのちということができます。特徴的な一部を描くことで全体を想像させるためには、描かれた一部がわずかであればあるほど、インパクトが強く、ひろがりも大きくなります。
朝帰りだんだん内が近くなり
誰でも経験のありそうな状況をさりげなく描いたこの古句は、読むものひとりひとりの中で心理的な葛藤としてひろがり、はてに笑いを誘います。この場合、くどくどとした心境の説明はまったく不要です。たった一滴おとしたインクが、水面へその色を拡げていく――これが、最短詩型である川柳の最大の効果です。
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