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           風刺表現の根底や回路をなすのは、前記の批評精神をはじめ、 アイロニー、セルフ・アイロニー(自虐)、ウイット、シニシズム、エピグラム(寸鉄性)、ユーモア、ブラック・ユーモア、ペ ーソス、エスプリなど、さまざまな要素がありますが、それらを 駆使しての基本的な方法論に入る前に、ぜひ銘記しておいていた だきたいのは、次の三つの要点で、わたしはこれを「時事川柳の 3S」と名づけています。  |  
    
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           時事川柳の3S  | 
        
           SPEED  | 
        
           瞬発力・即応性  | 
    
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           SENSE  | 
        
           発想・視角・趣向  | 
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           STYLE  | 
        
           形象化・完成度  | 
    
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            時事川柳を最も時事川柳たらしめているのが、この3Sです。  @スピード(SPEED)…スピードというのは、作句の速      
        度ということではありません。物事に対する対応の速さ、即応性      
        を指したものです。これを可能にするのは、感覚的な鋭さという      
        よりは、日頃からの心の構え、いかに油断なくレーダーを張りめ      
        ぐらすかの周到さにあると、私は考えています。  Aセンス(SENSE)…時事川柳というものが、単に政治的、社会的な素材を取り込んだだけの作品という意味でないこと      
        は、すでに記しましたが、目前で、現に動いている事象から、その典型(象徴的な部分)だけを引き出し、それを切り口として提示して見せる(説明するのではない)のが、センスです。  Bスタイル(STYLE)
        川柳の形式は、総音数十七音、その中で分割された音数のブロ      
        ックを適宜に組み合わせて、律調ある一句に構成するわけです。      
        必ずしも5・7・5の正格にこだわらなくても結構ですが、いたずらに音数が多く、散文のように冗長だったり、リズム感が全く      
        ないものは、川柳の形式とはみとめられないということです。 以上が、「時事川柳の3S」で、どの「S」が欠けても作品と して完全とはいえないわけですが、といって、誰でもがはじめか ら完全を期するのは無理なことですから、これを努力目標として一歩でも近づく心構えで作句にのぞまれることを希望します。  |