幕末の川柳浮世絵
「狂句柳の栞」と題された浮世絵シリーズで、12点ほどの幕末の作品の一つです。
でかいからヤダアと逃げる麦畑
タイトルのすぐ脇にある川柳は、麦畑での「野良出会い」の1コマ。言い寄る男に「でかいからヤダア」と袖を振る女性が描かれていますが、このコトバから推測されるのは、既に相手との経験があることを物語っています。川柳では、一部を描くことによって、その裏側に隠された作者の意図などがありますが、この場合には、おおらかな田園地帯での男女の距離を示しているものでしょう。
左上の赤い四角の中にもう一句書かれています。
人間の種迄もまく麦畑
説明は不要でしょう。本来、麦の種を蒔くことを目的とする麦畑で蒔かれる矛盾した別の「モノ」の発見が句の可笑しさを構成しています。対比法ともいうようなこの表現は、しばしば川柳の中にも見られます。
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