破礼句刷り物 

 川柳の選句は、内容別に「高番」(高尚な内容の句)、「中番」(世態人情の句)、と卑猥な内容も含む「末番」に分けられます。
 特に末番の最後の句を「大尾」とよびますが、中には極めて卑猥な内容を直接描いた作品もあり、一連の卑猥な句を「破礼句(ばれく)」とも呼びます。
 川柳が、世に広まる菜に一方では「格言」や「成語」になるような内容を持ちながら、一方では、その卑猥な面が持て囃され、多く漫画や浮世絵まがいと組み合わされて販売されました。
 これが、一時期川柳の中心と思われ、「川柳=卑猥」という印象を世に植え付けてしまったことも否めません。
 人間のあらゆる面を描く川柳では、もちろん男女の風俗もテーマの一つに成り得ます。「俳句は高尚で川柳は低俗」と言われる一面はここにあります。しかし、そこには、低俗にもなるニンゲン存在の真実があり、それに眼を背けずに描いてきた川柳の真摯な目も確かにあります。

 


  破礼句刷り物 「あとそうじこまるこまるとはやこぼし」
                                〔朱雀洞文庫蔵〕


破礼句刷り物 「いまゐくとまろびいでたりやぐのそと」
                                〔朱雀洞文庫蔵〕

戦前?の川柳浮世絵

 あとそうじこまるこまるとはやこぼし

 
和紙に浮世絵風の印刷ですが、木版ではなく戦前のアングラ刊行物と思われます。
 句もいわゆる古川柳ではなく、それらしく作ったもので、十七音である事からいかにも卑猥な川柳のように感じられます。
 『誹風柳多留』においても卑猥な句が削られたり、一部の語を抹消して活字化された時代がありましたが、御上の規制の目をくぐって多くの出版物や印刷物が流通しました。これも、そういったものの一つでしょう。
 
 いまゐくとまろびいでたりやぐのそと
 これも解説は不要でしょう。

  川柳博物館