創 作

日常茶飯

                 尾藤 一泉

 

懐剣を仕舞いそこなう春の酒
言葉の庭師から一本の雌蕊
胃袋を浚い集める枯れた詩語
パペットの糸が絡まる古い辞書
蛇に林檎 舌から離れないくびき
辞書の隅からポッと点く自爆テロ
重箱の隅で眠らぬヒキガエル
目覚めから語尾の手垢が拭えない
人肌になりたく解ける雪だるま
神が背を押すいのちの軽さ
国境跨ぐムハマドの舌と爪
靖国の玉砂利を炒る中華鍋
のっぺらぼうに神さまの舌生える
餓えている国から買ってくるグルメ