字余り じあまり

 5・7・5定型の三句体において5音にすべきところが6音以上に、7音であるべきところが8音以上になり、十七音より多くなったもの。芭蕉の句
  枯枝に烏のとまりけり秋の暮 (5・9・5)
 などは典型的な例。
 5・7・5のうちの一つだけが多音数になった字余りだけでなく、二つ、もしくは全部が多音数になる場合でも、定型感をとどめ得る場合がある。
  夜店の灯あか鬼あお鬼まずしい鬼  【5・8・6】
  働き蜂の親もやっぱり働き蜂     【7・7・6】
それぞれ19音、20音でであるが、全体のバランスがよく、定型に準じた安定感を感じさせる。
 万葉集と古今集から金葉集までは、字余りの句の大部分には単独母音すなわち「あ、い、う、え、お」いずれかの語が含まれている。これは本居宣長が発見した。
 万葉集の場合、読み方の研究によって、この「法則」の正しさはしだいに実証されている。

 一章の基本的律格を侵さない程度の三句体で、総音数が増減(多言数=字余り、寡音数=字足らず)したかたち(準格=定型感)は定型とみなされる。