柳風式法
一、政事に係はりたる事は何事によらず句作撰みなど致すまじき事
二、近世の貴顕官員の実名など句中に取結びたる風調堅く引墨致すまじき事
三、畏れある事は申すに及ばず、譬ひ知己に候とも人名を顕はし、讒謗がまし き句体は一切引墨致す間敷事
四、博突出火刑罰などの不吉がましき句作は一切禁忌たるべき事
五、句撰の規則は天朝を尊敬し、敬神愛国を旨とし、昔(往古)の貴人、忠孝、 道徳、五常の教導、技芸の名誉、奇特の句体を尊み高番に据うべき事
右は自然善行の道句案に浮み勧懲の一端にもなるべきが故也
六、句撰は決して依怙これなく、風流専一に引墨すべき事
七、累年我が柳風に於ては聊か不埒の者これなく候へども此後万一不法の輩 有之候ては以の外の一大事の儀に付き此段精々注意し、是迄の規矩を崩 さず柳風永続すべきやう心掛専一の事
八、開巻席上に於ても相済み候までは禁酒致し、雑言の上争論無之様慎み、
風雅を友と睦み交り、厚く人和の基と申す大意を心得、幾久しく此道の繁栄 となり候はば、元祖柳翁への孝養風流の功と相心得承知可致様大略書送
り畢
月 日
狂句判者 五世川柳
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