雑詠 ざつえい / 自由吟 じゆうぎん

 課題によらない作品を雑詠または自由吟と呼ぶ。
 前句附の題句(前句)以降、競詠(万句合、角力句合)を作句の契機とした川柳には、課題が切り離せず、寺社への奉額句や追善句など特殊な場合のほか、雑詠という概念は歴史的に存在しなかった。
 現在、川柳誌の殆どすべてが掲載している自選の雑詠及び募集欄は、明治の新川柳誌第一号の「五月鯉」(明治38年5月創刊)に始まる。同誌には主宰者・阪井久良伎が数十章の雑詠を発表、「新風俗詩撰」と題した近詠欄(久良伎選)を設けている。
 ちなみに、俳句の「ホトトギス」に雑詠欄(高浜虚子選)が設けられたのが明治41年10月だから、「五月鯉」の方が雑詠欄としては早いことになる。

 一章の基本的律格を侵さない程度の三句体で、総音数が増減(多言数=字余り、寡音数=字足らず)したかたち(準格=定型感)は定型とみなされる。